オスカーとトシコ&ひろみ<13> 2009.4.14.盛岡タイムス

 明るくて楽しい。激しくて速い。完璧なジャズピアニストとして知られたオスカー・ピーターソン(07年82歳で没)が99年、第11回の高松宮殿下記念「世界文化賞」を受賞した時、授賞式に招待されたのは穐吉敏子さんだった、オスカー・ピーターソン氏に賞を与えた理由のひとつが「穐吉敏子を見い出してくれた」ということだったの、と穐吉さんはうれしそうに僕に話してくれた。(自己のサイドメンを使わせてまで、アメリカ・デビューに尽力)

  そのピーターソンの歴史をひも解けば、彼が10歳の時ジャズピアノに興味を示し、テディ・ウイルソンをまねて弾き出したとある。テディと言えば、穐吉さんが、福井参郎さんに聴かせて貰ったSPレコードで、気に入った「スイート・ロレイン」を弾いてた人。彼女もまだその頃は10代後半。二人のジャズの原点がテディ・ウイルソンだったというのは面白い。

  そういえば、今やジャズ界のニュースターとなって、話題が集中しているピアニスト上原ひろみは、中学時代、何とピーターソンに自分のデモテープを聴いてもらえたラッキー少女であったのだ。02年ニューヨークで、デビューCD「アナザー・マインド」を録音する時プレッシャーに耐えかねて、氏にメールを送ったら「You can do it」と彼女を励ましたという。

  僕が以前、穐吉さんに若い日本のジャズプレイヤーのことを聞いたら、ジャズとはちょっと違うけど、上原ひろみがいいと言ったことがあった。彼女は時折花束をかかえて穐吉さんのお宅をたずねてくるということも聞いていた。

  僕がその生上原をかぶりつきで見たのは、09年1月、東京プリンスホテル。SJ誌のジャズディスク大賞の「金賞」「制作企画賞」「最優秀ジャズビデオ賞」の三冠に輝やいた、その授賞式での演奏。かわいい顔とあのヘアー。内面の想いが熱くなって動作へと現われてくる自然体のパフォーマンス。帽子をかぶっていた女房の小春も、脱帽!の興奮状態でした。