ジャズ・ピアノ百科事典<27>2009.7.20.盛岡タイムス

 09年5月、スイング・ジャーナルから「ジャズ・ピアノ・百科辞典」が発売になった。この一冊で、ジャズ・ピアノのすべてがわかる決定版というふれこみ。

  中でも255㌻を使って書かれているジャズ・ピアノ・カタログは、トラッドからスイング編38作品。ビーバップ/ハードバップ編450作品。モード編94作品。フリー編22作品。クロスオーバー/フュージョン編18作品。ポストモダン166作品。ヨーロッパ編130作品。日本編82作品の合計1千枚のジャズ・ピアノ・レコード(CD)傑作選。

  もちろんの日本編のトップは、穐吉敏子さんの作品「ザ・トシコ・トリオ/秋吉敏子」である。この作品は56年に渡米し、日本人で初めて、バークリー音楽院に留学した、その留学初年の56年に録音されたもので、アメリカで初録音盤であり、穐吉敏子さんの不滅の大傑作といえる作品だ。9曲中5曲が穐吉さんのオリジナル。ほかに日本歌曲「蘇州の夜」が穐吉さんの編曲で演奏されている。ジャケットも美しい作品である。

  その次には、「トシコ=マリアーノ・カルテット/秋吉敏子」(60年NY録音)。前夫で、サックス奏者のチャーリー・マリアーノと結婚した1年後の録音である。このアルバムには、今や穐吉さんのテーマ曲となった、ロング・イエロー・ロードが初吹込みされている名盤なのです。

  そして「トップ・オブ・ザ・ゲイトの秋吉敏子」(68年NY実況録音)。さらには「リメンバリング・バド~クレオパトラの夢/秋吉敏子」(90年録音)。このバドパウエル作品集は、穐吉さんが、最も尊敬するピアニスト・バドに捧げた渾身の逸品とされる。この作品は、穐吉さんのコンサートでは、必ずといっていいほど愛奏されている曲が中心だが、日本で一番愛聴されている。バドの演奏「クレオ・パトラの夢」は初録。彼女はこの曲だけは彼の駄作だと言ったことがあるが、遂にこれを演るのかい、という彼の姿が浮かぶ。