ケイタイの墨絵<32>2009.8.24.盛岡タイムス

 このシリーズ(26)で♯&♭の「すみ絵」のことを書いた。僕はそこに70年に穐吉敏子さんが、♯&♭のために書いた「ビッグバンド用の曲」と書いたが、本当は「♯&♭用に編曲し直した曲」でした。

  なぜなら「すみ絵」は67年、ニューヨークのタウンホールで開催された「穐吉敏子・リサイタル」で初演された曲であったからですが、録音されたのは、原信夫と♯&♭の方が早く、アルバムの「ダブル・エクスポージャー」に70年3月に収録されている。

  また同じ70年8月の大阪万博ホールでの「インター・ナショナル・ジャズ・フェスティバル」では、♯&♭との共演曲として演奏されていました。また72年3月には穐吉さん自身もカルテット(四重奏)で「ザ・パーソナル・アスペクト・イン・ジャズ」というアルバムに収録しています。

  その後には、水俣病をテーマにした組曲「インサイツ」(77年SJ誌のジャズ・ディスク大賞(金賞)に輝いたアルバムに、ビッグ・バンド演奏で再録。79年1月のビッグバンド・帰国ツアー終了後の2月には日本への置きみやげとして「すみ絵」のタイトルアルバムを録音。

  さらには26年を経た05年12月12日、76歳の誕生日に録音された「Hope」に、トリオの演奏で聴くことができ、最も新しい演奏では、06年の「渡米50周年記念日本公演」CDに収録した。この作品は06年度・SJジャズディスク大賞(日本ジャズ賞・特別賞)を受賞した。(このプロデューサーは僕でした)

  さて、この「すみ絵」という穐吉敏子・初期作の名曲は、前回、このトシコズドリームに登場した”歌手志望”の金本麻里さんのケイタイに電話をすると、呼出ベルのかわりに聴こえてくるのである。彼女にたずねると、ケイタイで「レコード会社直営♪サウンド」というサイトを開き、秋吉敏子で検索すると「Hope」のCDまるごと9曲と、ほかに、マンディ満ちるさんが歌った、Hopeの英語版と日本語版の2バーションの計11曲がダウンロードできるようになっているという。