マンディ満ちるコレクション<56>2010.2.9.盛岡タイムス

 今、この原稿を書きながら、聴いているCDは、渋谷ジャズ維新シリーズの「マンディ満ちるコレクション・穐吉敏子編」。国際的歌手「マンディ満ちる」が、母・穐吉敏子(ピアノ)の音楽生活60年を記念して、母のそれまでの作品の中から、自分の個人的な好みや、高い評価を得た作品、彼女が知っている母のお気に入りの作品、等を選んで構成した10曲からなる母と娘のハートフル・コラボレーション集。

 ジャケットは、マンディ2歳の頃、グランドピアノの上に座って、母が弾く「トシコの子守唄」?を聴いている写真。中身の音源は61年の初帰国時のソノシート盤「黄色い長い道」~95年の「ブラジリアン・フレンズ」まで。トリオからオーケストラまでの様々な演奏形態によるアルバム10作品の中から、それぞれ1曲づつ選び出している。

 このアルバムの中心を成すのは娘・マンディ(フルート)母・穐吉(ピアノ)の初共演(80年)の、黒いオルフェ(映画・カーニバルの朝)だろう。マンディ16歳の時の演奏である。この録音について彼女は「母が、私と何かをしたいが為に、そのプロジェクトを作ったんだと、今でも信じている。彼女なりに、ファミリーの跡を継ぐ娘に、母のプライドを見せたかったのではないかと。」

 そういえば、母娘がコンサートで初共演したのは、98年11月19日陸前高田で、だったなと、あの時の光景が頭の中に映像となって、フルートや歌声が甦って来る。

 とまれ。このコレクションCDの選曲について「思ったより大変だった。正直彼女のレパートリーには貴重なものがありすぎる!とにかく、コンポーザー、アレンジャー、ビックバンド・リーダー、ソリスト、ジャズピアニスト。そして何よりも、時を越えて私たちの存在よりも長く残る“声”を持つ母の作品をバランスよく紹介出来るように選んだつもりだ」とある。つまりCDを手にしたファンに対し母の未聴アルバムがあったら手を伸ばして欲しいという、娘の「希望」なのだと知った。