プライベート・インタビュー<95>2010.11.22.盛岡タイムス

 ジャズピアニスト・穐吉敏子の基本スタイルは「ビーバップ」。ジャズの巨人と言われる、チャーリー・パーカー(サックス奏者)やディジー・ガレスビー(トランペット奏者)が創り出したもので、メロディの構成が理論に基づいたものだが、理論よりメロディアスなアプローチを多用し、社会的にも一連一体化した流れのジャズの頂点。

 「ジョン・ルイス(ピアニスト)が言ってたけど、そのビーバップジャズにオーケストレーション。つまり、ビックバンドで不変的なものを持ち込んだってのは、どうやら私(敏子)らしい」。又、ビーバップはクロマティックアプローチ(バッハによく似ている)なのだとも。

 「昔は自分の音楽があった。最近、演奏者の区別がつかない。私の弾き方ってのはピアニマティックをどう処理するか!右と左のコードネイションをキープして、右でインプロヴァイスするの。そういうプレイそういうスイングするのを嫌う人もいます。でも私は気にしない。ビーバップはスイングしないって言った評論家が居た。だからスイング感って人それぞれ、いろいろあると思うけど「スイングしなけりゃ意味がない」原則的にはそれが母体になっている」。

 穐吉さんのオーケストラ曲のとらえられ方を聞いてみたら、「私の演奏は世界中どこでも同じだが、国柄によって好みはある」のだとも。

「イギリスだと伝統的なものが好まれるから、私のは前衛だ!。ドイツはアバンギャルドな物凄い所だから前衛じゃない!。イタリアでは全然モダンじゃない!と新聞で叩かれた。でも、それは私とは全く関係ないことなの。呼んでくれるところで自分の音楽を演って、喜んでもらえれば嬉しい。でなければ仕様がない。私は職人じゃなく芸術家だから注文によって演奏することはしない。作品とプレイは同じじゃないといけない。チックコリア(ピアニスト)が私の曲を弾いたら私になっちゃったってガックリしてた・・・」。

この話は87年8月、僕がプライベート・インタビューした時の抜粋です。