カドリールはいかが? <8>2009.3.9.盛岡タイムス

 花巻市に佐藤司美子さんという67年生まれのピアニストが居る。岩手大学3年の時、卒論以外の全単位を取ってから、ロータリー財団の奨学生として、ワシントン大学へ留学。1年後に岩大へ戻り、卒論を書き、再びアメリカへ戻り、W大で作曲を学んだ才女で、今も時折アメリカへ演奏に行く。学生時代に書いた、霧の安息所(ロッジ・ミスト・ヘイブン)は、アメリカやカナダ、ブラジルのローカルオーケストラが、今も演奏している曲だ。

 僕が盛岡に店を出した01年~02年頃彼女には何度か出演していただいたことから、昨年(08)9月に開いた野外での「第2回オータムジャズコンサート・イン・紫波ビューガーデン」に13組のバンド出演中、唯一のソロピアノで出演していただいた時、聴き覚えのある珍しい曲を弾いた。終演後に話してみたら、穐吉敏子さんが昔録音したビックバンドの演奏を聴いて、自分で採譜して、サックスパートまでピアノに置き替えて演奏したというのだった。

 曲名は「QUADRILLE  ANYONE?」カドリールはいかが?75年春、ロスで録音した・穐吉敏子=ルー・タバキン・ビックバンドのアルバム「ロング・イエロー・ロード」に収められている。ちなみに、このアルバムは、74年の同ビックバンドのデビュー作「孤軍」に次ぐ2枚目のオーケストラ作品。同曲は79年に同ビックバンド再録。94年にはソロでの「アット・メイベック」にも収録されているし、ライブでは楽しそうに弾く。

 カドリールとは、フランスに生まれヨーロッパ貴族の間で流行したダンスのことであるらしい。満州での女学校時代には、なぎなたも習えばカドリールという古風なダンスも習った。そこから思いついて穐吉さんが書いた曲。楽しそうに見えたのは、穐吉さん自身が女学校時代に戻ったような気分で、指揮や演奏をしていたからなのかも知れない。

 佐藤司美子さんはオータムジャズコンサート以来毎月この曲を開運橋のジョニーで演奏している。