アート・オウル・ジャズ・オーケストラ<73>2010.6.8.盛岡タイムス

 長崎出身のアマチュア・トランペッター・内田真嗣さん率いる「アート・オウル・ジャズ・オーケストラ」が、世界ジャズ界のトップレディ・ジャズマスター、の穐吉敏子さんと東京中野ゼロホールで共演した。

大学一年の時、穐吉さんの音楽に出会って感動と衝撃を受けて以来、トシコの音楽を一筋に吹き続けて30余年。08年11月、長崎で彼の「アート・クロウ・ジャズ・アンサンブル」が穐吉さんと初共演。2度目となった今回、東京での大舞台を実現させて見せた。

 上京10年の彼が、5年前に結成した、穐吉さんの曲だけを演奏するオーケストラ。難曲をモノにしようとする心意気は、流石のプロも顔負けだ。内容としては、長崎で純粋に追求してきた、アンサンブルの演奏の方が素晴らしい出来ではあったが、今回のオーケストラでは、ソロプレイヤーたちの個性が光った。

 メンバー総勢24名、基本的に16名編成のオーケストラなので、各パートが演奏する曲によって入れ替えがあり、サッカーを見ている様な気分。そういえば以前、穐吉さんが「若い時には運動もしなくちゃと思っていましたが、今では演奏する事自体がモーレツな運動になります」と言っていた事があったなと頭の中に浮かんだ。

 「内田さんは、以前持っていた私のオーケストラの演奏を良く聴きに来て下さってました。6~7年前にお会いした時、私の作曲したものを演奏していらっしゃるというので、大変驚き、嬉しく思いました。社会に入った後でも、よくこういうふうにオーケストラを作って演奏していらっしゃるなと」

 プログラム10曲の他、アンコールでは「長崎シティ・オブ・ビジョン」「ホープ」そして穐吉さんの曲としてはめずらしい「スティト・オブ・ユニゾン」この曲では全員参加の大オーケストラ・大ユニゾンで幕を閉じた。

 「ワインも飲んでしまったらそれでおしまい。ただ印象が残るだけ、音楽も同じ」そういう穐吉さんの言葉が曲になった様な「メモリー」での内田さんのフリューゲルホーンの音色が心から離れない。