希望という名のホープ<25>2009.7.6.盛岡タイムス

 21世紀最初の8月6日、広島厚生年金会館で初演と、同時録音がなされた穐吉敏子さん作曲の「ヒロシマ-そして終焉から」という広島の原爆被害者に捧げられた、3楽章からなる組曲がある。

  第1楽章「無益な悲劇」第2楽章「生存者の語り」第3楽章「希望」。演奏はニューヨークの穐吉敏子・ジャズ・オーケストラで、フィーチャーリングは、彼女の夫、ルー・タバキン(テナーサックス&フルート)ゲストはジョージ川口(ドラム)。元長賢(笛)、重森涼子(朗読)で、43分にも及ぶ大作である。

  この初演後、ニューヨークへ戻った1カ月後に、世界貿易センタービル(ツインタワー)がテロの標的となり、あのいまわしい9・11の大惨事が起きた。そのあまりのタイミングに穐吉さんは、大変なショックを受け、世の中から戦争がなくなることを希望し続けることを決意し、9・11の01年以来、どこの国の、どんな所での演奏会があっても、穐吉さんは、この組曲・最終章の「希望」をコンサートの最後に、必ず演奏する。

  人間どんな時でも、希望をなくしては生きられない!と、ロング・イエロー・ロードのオープニング・テーマとのセットが定番となってから、ホープというタイトルのアルバムも作った。さらにはそのホープという曲に、詩人・谷川俊太郎氏が歌詞を付けたことで、穐吉さんは彼女の娘で歌手の「マンディ・満ちる」にそれを唄わせ、彼女が伴奏するという、珍しいCD「HOPE」が06年に発売になった。

  穐吉さんが言うように、自分の曲に詩が付いたのも、また、歌手の伴奏のレコーディングも初めてのもの。そしてまた、娘さんは、その詩を、英語に書き直し、英語バージョンまで歌った。演奏と、詩を楽しみながら、平和を願える。HOPEづくしのCDとなったのだ。

  ちなみに「ヒロシマ組曲」はFM岩手の「オールザットジャズ」僕の担当番組で当時ノーカットで放送し、その後、NHKFMでも、放送された。今年も8月は1カ月後にやってくる。