#&♭の「すみ絵」<26>2009.7.13.盛岡タイムス

 日本の音楽ファンなら、誰もが知っている、原信夫とシャープス&フラッツ。そのファイナル・ツアー・コンサート・花巻公演(09年6月27日)を聴きに行ってきた。

  会場の花巻文化会館の駐車場で、何と30余年振りに、小原正夫さんに会った。彼は20代のとき、盛岡の中央通で「リッチ」というジャズ喫茶を開いていた方だから、二人で抱きあって再会を喜んだ。今は地元花巻で、シソ栽培しながら、シッソ?な生活をしているという。そういえば、昨年08年11月、岩手日報の岩手人間山脈というシリーズに登場しました。会場に入ると席まで前後でした。

  さて、♯&♭と言えば、何と58年も続けてきた世界最長不倒記録のビッグバンドである。結成されたのは51年。10人編成でのスタートで、新しい店、品川のヴィラというクラブでの演奏が始まりだったらしい。原さんの奥さんが、初代のピアニストだったというし、当時、ヴィラには、日本のミュージシャンも、たくさん聴きに来て、それこそ、渡米以前の穐吉敏子さんも来ては、たびたびバンドに参加してたらしいのです。

  そういうことがあってか、70年に穐吉さんが、♯&♭のために書いたビッグ・バンド用の曲「すみ絵」も、コンサートで演奏した。世界歴代の有名ビッグバンドの代表曲を集めたファイナル・プログラムの中でも、やはり、穐吉さんの曲は、ほかの曲に比べても、まったく別の独創的なジャズであることを、再認識させられた。美しい音でした。良くスイングする縦音のブラス群。それに対し、横糸とも言える主旋律を奏でるフルート。ジャズ雅楽的穐吉我楽の素晴らしい曲に酔った。

  ♯&♭のメンバーで、唯一人の外国人、マイク・プライス(トランペット)は、70年代から80年代にかけての10年、リハーサル・バンドから、作曲、編曲、ビッグバンドで世界ナンバーワンに登りつめたロスアンゼルス時代の、穐吉敏子・ルータバキン、ビッグバンドの不動のメンバーでしたから、なお感慨深いものでした。