失敗は2度繰り返さず<2>2009.1.26.盛岡タイムス

 ジャズの世界で、今彼女以上の人は居ないと言われる。ジャズ・マスターの穐吉敏子さん。そのエネルギッシュな演奏を支える食事と、何度かご一緒させていただいたとき、演奏終了後の主催者による打ち上げパーテイーなどで食べ方を見ていると、それは実に食べっぷりがよく「豪快」という表現がピッタリと似合う。

 よく食べ、よく話し、よく笑い、よく飲む。半端じゃない。本当においしいワインがあればなおさらゴキゲンで過去の貴重な体験のひもをといて話し出す。「酒を飲んで演奏したら、何回やってもその鍵盤に指が行かず失敗。それからというもの演奏前には絶対飲まない。たとえアフターの打ち上げの場であっても飲んでからは演奏しません!」もその一つ。

 それでも、何度も呼んでくれた町で、気心の知れた人たちと一緒に飲んだとき、自然に演奏し始めたアマチュアの人たちに交じって、彼女自身から、ちょっとやってみましょうか、とドラムで参加。その演奏に皆がビックリ大喜びで、穐吉さんの天才的なリズム感に大きな拍手が巻き起こったのは当然のこと。

後にも先にも、あんなハプニングは一度っきり。

「随分前になるけど、モントリオール・ジャズ祭で、食事をしてから弾いたら、猛烈にお腹が痛くなって大変だったの!あれ以来ステージに上がる前は絶対食べないようにしているんです。」そんなことから、遅めの昼食を取り、ステージが終わってからの、打ち上げとなると、だいたい夜の10時過ぎのパーティーで、ワインを飲みながらの食事となるが、今度はたいがい主催者や、関係者たちから話かけられサインをせがまれ、記念写真を何度も何枚も撮られる。それでもファンにせがまれることには、すべてに笑顔で応じるから、ゆっくり食べる時間はほとんどない。だから、より「豪快な食べ方」になるので見ている方も、作った方も、提供した方も気持ちがよくなるのだろうと思う。それにしてもファンあっての演奏者と、ファンを大切にする穐吉さんのすごさ。(開運橋のジョニー)