ニューヨークのセントラルパークの西側、あの高級な古い住宅街に、ジャズ・ピアニスト・穐吉敏子さんの家がある。映画・ターミナルに出てきた有名なジャズメンたちをあつめて撮影された「歴史的写真」の様な、道から、玄関まで、それぞれの家に階段のついている伝統的な住宅様式のそれである。
その中2階の様な階段上の1階の居間にあるカウンター越しの壁に、1枚の写真パネルが飾られている。穐吉敏子さんのジャズライフ40周年・渡米30周年記念コンサートで、帰国公演を行った86年の時の記念写真である。
撮影された場所は、岩手県陸前高田市民会館のロビー。約30×10㌢ほどの板(気仙杉)を900枚並べて1枚の巨大なパネル状にした上から、終演後にメンバー全員が、その上に乗って、いたるところに、おもいおもいにサインを書いてから、そのパネルをメンバーと聴衆全員が取り囲んで記念写真を撮ったもので、気仙杉ブランドPRの一役を担った。
今にして思えば、うそみたいな本当の話で、まさにドリーム(夢)のような出来事でしたね。そのサインされたパネル板は入場者全員が1枚ずつ記念プレートをして持ち帰って、家の柱などに飾られたものでした。
穐吉敏子さんが率いる、ニューヨークのジャズ・オーケストラ2度目の陸前高田公演時の、そのアイデアは、市内の製材業・大和田幸男氏からの木材提供と、建築業、菅野照夫氏の加工という、粋な計らいによるものでした。
穐吉さんが10年かけて世界の頂点に立ったロサンゼルスの穐吉敏子・ルータバキンビッグバンドを解散し、ニューヨークで再編した、新生オーケストラ「穐吉敏子・ジャズオーケストラ・フィーチャーリング・ルータバキン」が、岩手で初演したのは、84年10月27日、陸前高田市民会館。3回の東京公演を含む全国10カ所の初来日ツアーの時で、僕の店ジャズ喫茶ジョニーも10周年だった。35周年の09年は6月の穐吉・ルー・デュオに続き、9月15・16の2日間、ルー・タバキン国際トリオが店に出演する。