ピアノ生誕300年祭<35>2009.9.14.盛岡タイムス

 「ピアノの歴史300年を祝う」として、全世界へテレビ中継された、2000年3月9日、米国・スミソニアンで開催された「ピアノ誕生・300年祭コンサート」。この催しに、出演を依頼された日本人は、ジャズピアニストの穐吉敏子さん(当時70歳)ただ1人であった。

  ところが、その3月は、ニューヨークから日本に来て、ほぼ1カ月間、ソロでのコンサートツアーの真っ最中であったために、彼女の300年祭出演は、日本からワシントンDCに飛んで、着いたその日に同祭に出演し、その日のうちにまた、日本に飛んで戻り、着いたその日からまた、日本ツアーを続けるという、とんでもない離れ技をやってのけたのである。もちろん、当時陸前高田でやっていたぼくの店「ジョニー」にも来店してくれて、3月26日にソロライブをプレゼントしてくれました。

  その長いコンサートツアーを終えて、ニューヨークへ戻った穐吉さんは、息つく間もなく、かつて日本から贈られた桜が満開に咲く、ワシントンDCへ飛び、国立ケネディセンター・ホールでの、日本人へは初めてのコンタクト「アート・テイタム・パノラマ・シリーズ」への出演(4月1日)が、待っていたのでした。

  そのケネディセンターでのソロの話は、穐吉さんから事前に知らされていたので、ぼくは自分が知っている全国の穐吉ファンに手紙を出し、穐吉敏子さんのコンサートを聴きに行くツアー「第4回ジョニーと行くニューヨーク」という企画を立て、集まった20人ほどの皆さんと出掛けた。大阪からは穐吉さんの実姉・美代子さんとその友人たちも参加。

  そのコンサートは実況録音され、のちにCD化されましたが、日本から行ったぼくたちのこともステージで紹介してくれて、CDにまでそのまま収められており、感激でした。その上、解説のライナーまで書かせていただいた。

  4月3日には、ニューヨークのバードランドで穐吉敏子ジャズオーケストラを聴き、翌日の4日には、ツアー参加者全員を、穐吉さんが自宅に招いてくれて、彼女自ら、腕を振るっての料理とビンテージワインに舌鼓を打った。