口語短歌で敏子賛<45>2009.11.23.盛岡タイムス

 開運橋のジョニーで、05年8月26日から始まった「小泉とし夫・オリジナル・口語短歌・朗読ライブ」が、09年11月20日で13回目を迎えた。しかも、この日は小泉さん(本名・岡澤敏男)さんの82回目の誕生日。

  スタート時から、伴奏(バック・グランド・ミュージック)を担当しているギターの八木淳一郎さんの音に乗せて、できたての口語短歌20首を披露した。第1部「秋明菊のバラード」10首。第2部「穐吉敏子カルテット賛」10首という構成。それぞれの歌(詩)を解説しながらの朗読には、今回も感心のあまりに、客席から「ウーン」という声が聞こえてきた。

  以前、このトシコズ・ドリームで、穐吉敏子さんのジャズピアノ・ライブを聴いて書かれた小泉さんの短歌を紹介したことがある。今回は、10月にも彼女のライブを聴き、改めて、06年に録音された、穐吉敏子・ルータバキン・スーパーカルテットの「渡米50周年記念日本公演」のCDも聴き直してから、ライブの当日に書いたのだという。

  「不思議だな/大陸の黄土が今夜飛んできて/ファミレド・ファミレド/アングラ・ホール」「不安など微塵にもない/命より/ほとばしるリズム/ピアノを叩く」と、休日利用して、穐吉さんがジョニーへ来たライブ光景。「沸いてくる熱いメロディ/朗々と/テナー・サックス/はじけ跳ぶピアノ」と若き日の作曲による「ロング・イエロー・ロード」50年後の演奏の気迫を歌った。

  「能の鼓/フルートの尺八/静々と/小野田少尉が/摺り足に来る」「孤りだけジャングルに生きて/夢のなか/虚無僧が来て/尺八を吹く」。戦後30年過ぎて、ルバング島から救出された、小野田寛郎・元日本軍少尉のニュースにショックを受けた穐吉さんが、アメリカで孤軍奮闘し続けている自分をオーバーラップさせて作った曲「孤軍」での、夫・ルータバキン氏のフルートが奏でる尺八のような音を歌い表わした秀作。

  「パワフルな左手は金/よどみなく/オスティナートの/曲が耳うつ」と彼女特有の左手への賛歌。