クラシック・エンカウンター<90>2010.10.18.盛岡タイムス

 ‘10年3月27日。アメリカ・ワシントン・DCのケネディセンター・ジャズ・クラブで初めて聴いた、ジャズピアニスト・穐吉敏子さんの弾く、トルコ行進曲。凄まじい勢いとも言える大迫力の原曲演奏に続いてトリオで繰り広げられたアドリブの様なトルコならぬ、トシコの行進曲の音像が、忘れ易い僕の頭の中にしっかりと残っている。

 そう、そのトルコ(トシコ)マーチが遂にクラシック・エンカウンターというアルバムになった。演奏しているのは本荘玲子(クラシックピアニスト)と穐吉敏子(ジャズピアニスト)の二人、原曲を本荘さんが弾き、続いて穐吉さんが弾き継ぐかたちの、めったにはない、もちろん彼女たちにとっても初めてのアイディア。

 想えば、この二人、07年11月23日、共演こそしていないが、東京の紀尾井ホールで行われた、グレート・マスターズという大ベテランたちのクラシック・コンサートの同じ舞台で同じピアノを弾いていた。本荘さんは植村泰一さんというフルート奏者と、フルートとピアノのための小品曲などで共演。穐吉さんは特別ゲストということで、ソロでのクラシックをテーマとしたジャズ演奏だった。

 実はその本荘さんの主人(故)千葉馨氏はN響のホルン奏者だった人で、穐吉さんがまだ日本で活躍してた渡米前の55年前後、彼女は彼に演奏を頼んでいた仲でもあった。本荘さんもまたN響のピアニストとして活躍した方で紀尾井での再会から、穐吉さんの中でこのクラシック・エンカウンターの構想が芽生えたようである。

 モーツアルト。バッハ。ショパン。ベートーベン。チャイコフスキー。グリーク。フォーレ。レオンカヴァロ。ビゼー。9人の9曲。そして演奏の「究極」はビゼーのカルメンからの「ボヘアミンの踊り」“我・カルメンここにあり、というタッチで弾き出すのは、まるでオペラのステージを見ている気分です”と本荘玲子さん。

 このCDは、ジョニーにあげようと思って2枚予約しておいたのが届いたと、親友・境田憲一さんからの贈り物。