幻の朝日ソノラマ<5>2009.2.16.盛岡タイムス

 穐吉敏子さん(ジャズピアニスト)の1963年盛岡公演のパンフレットを僕に見せてくれて、コピーまで取らせてくれた富田健治さんが、次に開運橋のジョニーにへやってきたのは1ヵ月後の’08年11月13日のことだった。

 「照井さん、きょうはいいものを持ってきました!」と言ってぼくの前に差し出したそれは、何と「穐吉敏子リサイタル」と書かれた、昭和36年(1961年)3月10日発売の「朝日ソノラマ・レコードブック」、いわゆる当時本屋さんで売られていた、ソノシート盤のレコード。

 ジャズ誌などに載っていた写真では見てたし、LP盤や、CD盤に復刻されたものは持っているが、ソノシート盤で実際に手にして見たのは初めてのこと。感激に震えながらページをめくって見ていると、富田さんは「ぼくが持っているより、照井さんが持っていた方がいいと思うので差し上げます!」と言った。

 「あらえびす館でのジャケット展にも、これは展示されていなかったので、もしかすると持っていないのではないかと思いまして…..」と。ぼくは本当にうれしかったし、ありがたかった。

 朝日ソノラマのオリジナルソノシート盤というのは、穐吉敏子さんが1956年に米国バークリー音楽院に奨学生として渡米して以来、5年ぶりの初帰国公演のときの録音盤なのである。

 曲は「黄色い長い道」「ソルヴェージ・ソング」「木更津甚句」「ディープ・リバー」の4曲で、当時のソノシート盤はほとんどがEP盤と同じ大きさの17センチの片面プレスでヘナヘナとした薄いシートなのだが、これは、ソノシートとLPレコードの中間ぐらい。

 とはいってもソノシートに近いのではあるが、多少厚くて両面に2曲ずつプレスされているところからも、ソノシートといわず、レコードブックと当時表示していたもので、その厚さの分、音質的にも少しはLPに近いよい音だし、保存状態も最高でした。

 本の巻末には63・3・28・サワヤと鉛筆書きがしてあった。富田さん本当にありがとう。